奇跡の酒販店復活劇:誰もできなかった高単価宅配の秘策

仕事のこと

かつて私が経営していた酒販店はご多分に漏れず、低価格競争とコンビニエンスストアの台頭に喘いでいました。薄利多売のビジネスモデルは利益の減少を招き、廃業の二文字がちらつき始めていました。毎日のように注文は増える一方でしたが、そのほとんどが単価の低いビールや日常酒。儲けは雀の涙ほどで、このままでは先が見えないことは明らかでした。

秘策の萌芽:ターゲットを絞るという逆転の発想

そんなある日、私は一本の電話を受けました。それは、ある企業からの懇親会用の大量注文でした。いつもと違うのは、彼らが「少々高くても、時間指定で冷えたビールを」と希望したことです。この出来事が、私のビジネスモデルを大きく転換させるきっかけとなりました。

これまでの私は、あらゆる顧客を相手にしていました。しかし、それでは「高単価」という目的は達成できません。そこで私は、ターゲットを徹底的に絞り込むことを決意しました。

ターゲットは「イベント」「懇親会」「団体旅行」の3つ。

これらのニーズを持つ顧客は、価格よりも「質」や「利便性」を重視する傾向があります。特に、イベントや団体旅行では、幹事さんは多くの準備に追われており、酒類の手配まで手が回らないことが多い。ここに、私たちの「高単価宅配」の活路を見出したのです。


高単価宅配の具体策:誰も真似できない「価値」の提供

ターゲットを絞っただけでは、高単価宅配は実現しません。私は以下の3つの秘策を実行に移しました。

1. 「お任せ」で安心!プロが選ぶこだわりの品揃え

私たちは、お客様に「お酒選びの手間」をかけさせないことを徹底しました。イベントや懇親会の趣旨、参加者の年齢層、予算などをヒアリングし、それに合わせて最適な酒類をプロの目線で提案する「ご予算別お任せプラン」を導入。ビール、日本酒、ワイン、焼酎、ウイスキーなど、単価の高い高品質な商品を中心に取り揃えました。

「予算は○○円で、会社の周年パーティーに合う酒類をいくつか見繕ってほしい」といった要望に対し、当店は単に商品を届けるだけでなく、「参加人数や男女の比率を元に商品を選ぶなど」具体的な説明を添え、お客様に「なるほど!」と納得してもらえるような提案を心がけました。これにより、お客様は安心して私たちに任せることができ、高単価でも満足度を得られるようになりました。

2. 「手ぶら」で楽々!きめ細やかな配慮とサービス

イベントや懇親会の幹事さんの悩みを解消するため、私たちは酒類の提供だけでなく、「保冷した状態を保てるサービス」「プラコップの提供」「ロックアイスの提供」「飲み終わった空き缶の回収」などといったきめ細やかなサービスを行うことにしました。さらに、宴会場への直接配達はもちろんのこと、指定された場所への設置や、時間厳守での配送を徹底しました。

これにより、幹事さんは会場に到着してから慌てて準備する必要がなくなり、まさに「手ぶら」でイベントを迎えられるようになりました。この「手間いらず」のサービスは、特に多忙な法人顧客から絶大な支持を得ました。単価が高くても、それに見合うだけの「利便性」を提供することで、リピート率も飛躍的に向上しました。

3. 「プロの視点」で安心!ケータリングとの連携

さらに一歩踏み込み、私たちは地域のケータリング業者やイベント企画会社との連携を強化しました。これにより、酒類だけでなく、料理や会場設営まで含めたトータルでの提案が可能になり、お客様にとってはさらに手間が省けるようになりました。私たちは酒販のプロとして、ケータリング業者にはない酒類の知識や提案力を提供し、共にお客様の満足度を高めることに尽力しました。

この連携により、単なる酒類の注文ではなく、「懇親会を成功させるためのパートナー」としてお客様に認識されるようになり、より高単価の案件を受注できる基盤が固まりました。


60歳からの自由な働き方:儲かる仕事だけを選択する

これらの秘策が功を奏し、私の酒販店は驚くほどの回復を遂げました。低単価の宅配は激減し、高単価の法人・団体向けの注文が売上の大半を占めるようになりました。利益率が大幅に改善されたことで、私の働き方も大きく変わりました。

60歳を過ぎた今、私は儲かる仕事、つまり「イベント」「懇親会」「団体旅行」向けの宅配のみを受注し、それ以外の低単価の仕事は基本的にお断りしています。

これにより、時間は大幅に自由になり、趣味の時間や家族との時間を存分に楽しんでいます。以前は休みなく働いていたのが嘘のようです。週に数日の稼働で十分な収入を得られるようになり、まさに「自由に、そして儲かる仕事だけ」を享受できるようになったのです。


奇跡の復活劇の裏側:ビジネスモデル転換の重要性

私の酒販店の復活劇は、単なる運ではありませんでした。それは「ターゲットを明確に絞り込み、そのターゲットが本当に必要としている『価値』を徹底的に追求する」という、ビジネスモデルの根本的な転換があったからこそ実現できたことです。

薄利多売の競争から抜け出し、価格競争に巻き込まれない独自の「高付加価値」サービスを提供すること。これが、誰もできなかった高単価宅配の秘策であり、私の酒販店をどん底から救い上げた最大の要因です。


さいごに:あなたのビジネスも「奇跡の復活」を

私の経験が、今、ビジネスの壁にぶつかっている皆様の一助となれば幸いです。もし、あなたのビジネスが価格競争に巻き込まれ、疲弊しているのなら、一度立ち止まって考えてみてください。

「本当に解決すべき顧客の悩みは何だろうか?」 「誰に、どのような『価値』を提供すれば、高単価でも喜んで対価を支払ってくれるだろうか?」

これらの問いに向き合い、勇気を持ってビジネスモデルを転換すれば、あなたのビジネスも「奇跡の復活」を遂げられるはずです。私は今、心からそう信じています。

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