人生100年時代と言われる現代において、老後の資金計画は誰もが頭を悩ませる重要なテーマです。特に、定年という概念がない自営業者にとって、年金をいつから受け取るかは、働き方やライフプランに大きく関わる決断となります。
私自身、長年続けてきた自営業を60歳を迎えてもなお続けており、年金の受給開始年齢については本当に熟慮を重ねました。一般的な考え方では65歳からの受給開始が主流ですが、私は自身の状況を踏まえ、思い切って60歳から年金を受け取るという道を選びました。
なぜ60歳からの繰り上げ受給を選んだのか?
繰り上げ受給を選択した最大の理由は、「元気なうちに使えるお金を確保したい」という強い思いがあったからです。もちろん、繰り上げ受給を選択することで、65歳から受け取るよりも年金額は減額されます。これは事前にしっかりと理解していました。
私の場合は、事業所得と年金の合計額によっては年金の一部または全額が支給停止となる可能性がありました。いわゆる「在職老齢年金」の制度です。しかし、幸いなことに、妻も働いているため、世帯全体の収入バランスを考慮しながら受給額を調整することで、年金の減額を回避することができました。この点は、事前に年金事務所に相談するなど、しっかりと情報収集を行ったことが大きかったと思います。
実際に繰り上げ受給してみて感じたメリット
昨年10月から実際に年金の受け取りが始まり、2か月に一度、指定の口座に入金があるたびに、なんとも言えない安心感と喜びが湧き上がってきます。金額の大小は確かにありますが、自分が長年納めてきた保険料が形となって戻ってくるというのは、本当にありがたいものです。
繰り上げ受給を選択して良かったと感じる点は、経済的な安心感を得られたことだけではありません。
1. 自由になるお金が増えたこと:
現役で仕事をしているとはいえ、年金という安定収入があることで、気持ちにゆとりが生まれました。以前は少し躊躇していた趣味への投資や、友人との食事なども、気兼ねなく楽しめるようになりました。
2. 健康なうちに楽しめる時間が増えたこと:
将来、体が思うように動かなくなった時のことを考えると、元気なうちに色々な経験をしておきたいという気持ちがあります。年金という経済的な基盤があることで、旅行に出かけたり、新しいことに挑戦したりする意欲が湧いてきました。
3. NISAなどの運用に挑戦できる余裕ができたこと:
年金の一部を、将来の資産形成のためにNISA(少額投資非課税制度)で運用することも検討しています。現役時代の収入に加えて、年金という新たな資金源ができたことで、長期的な視点での資産運用に挑戦する余裕が生まれました。
周囲の反応と繰り上げ受給に対する考え方
私の周りの友人たちは、まだ年金を受け取っていない人が多いのが現状です。「もったいない」「損するんじゃないの?」といった声も聞かれます。もちろん、65歳以降に受け取り始めれば、受給額は増えますし、それが合理的な選択である方もいるでしょう。
しかし、実際に年金を受け取ってみて思うのは、「もらう人にしか分からない有難みがある」ということです。数字上の損得勘定だけではなく、精神的な安心感や、今この瞬間を豊かに生きるための選択肢が増えるというメリットは、金額以上に大きいと感じています。
繰り上げ受給を検討する上での注意点
もちろん、繰り上げ受給には注意すべき点もあります。
- 減額率: 繰り上げ受給を選択すると、受給開始年齢に応じて年金額が減額されます。減額率は、繰り上げる月数によって異なりますので、事前にしっかりと確認する必要があります。
- 在職老齢年金: 厚生年金に加入している方が繰り上げ受給する場合、収入によっては年金の一部または全額が支給停止となることがあります。自身の収入状況を正確に把握しておくことが重要です。
- 加給年金・振替加算: 配偶者や子どものいる方が繰り上げ受給する場合、加給年金や振替加算が支給されなくなる場合があります。
これらの注意点を踏まえた上で、ご自身のライフプランや経済状況を慎重に検討することが大切です。年金事務所や専門家への相談も有効な手段となるでしょう。
まとめ:後悔しない年金受給のために
年金をいつから受け取るかは、人それぞれ異なる正解がある問いです。私の場合は、60歳からの繰り上げ受給という選択が、今のところ非常に満足のいく結果となっています。
「健康なうちに使えるお金を確保したい」「早めに経済的な安心感を得たい」と考える方にとって、繰り上げ受給は有力な選択肢の一つとなるのではないでしょうか。
大切なのは、周りの意見に流されるのではなく、ご自身の状況をしっかりと見つめ、後悔のない選択をすることです。今回の私の経験が、少しでも皆様の年金受給に関する意思決定の参考になれば幸いです。